恋文・闇・風、そして冬 〜イビサスモークレストラン〜

2003年6月〜2005年7月
 

前回の続きはこちら。

イビサ ふたたび 〜左膝の呪い〜


 
 

さてさて、
旅の話はなかなか進みません(笑)

あと少し、ほんの少し、イビサスモークレストランでの思い出深いお話を。

 
 
 

浮羽の山奥というのはなかなか素敵なところでございまして、
山に川、ぽつりぽつりと民家があるだけです。
当時は携帯電話の電波さえ届いておりませんでした。

携帯電話を使うためには車で20分ほど山を下らないと使えないのです。

 

そんなわけで、手紙を書くわけです。

大阪の友人・先輩・大好きだった女の子、、、
手紙を書いて、書いて、返事が来たらすぐ書いて、
イビサにいる2年間ほどでどれだけの手紙を書いたことか。

このご時世、携帯電話ひとつあればすぐに人と繋がれて便利は便利なのですが、
 
 

手紙はいいですよぉぉ!!、という話。
 
 

文通はいいですよぉぉ!!、という話。
 
 

たとえ恋は叶わなくとも手紙のやり取りというのは素敵なものなのです。

 
 
 

他にも山奥ならではのお話。

普通に暮らしていると『真っ暗闇』というものを経験することはなかなかないと思いますが、
イビサでは『真っ暗闇』というのが度々ありました。

レストランから自分の小屋に帰る道、
歩いて1分かかるかどうかくらいの距離なのですが、
道がカーブしておりまして、少しの区間だけレストランの光も届かず、民家の光も届かないところがありまして、

新月ともなると自分の手さえ見えない夜、というのがあるのです。

道の右側は山側なので大丈夫なのですが、左側は下の川に落ちていっちゃいそうになります(実際にはよっっっぽどマヌケじゃないと落ちていきませんが)。

ただの新月なら何も見えずとも特に怖いこともないのですが、
激しい雨なんかが降ると川の音も聞こえず、
道路の右側を歩けば大丈夫!とわかっていても視覚と聴覚が働かないとなかなか不安になるものなのです。

逆に満月の夜なんかは川の底まで見えるんじゃないかと思うくらい明るかったりするんです。

月夜だの闇夜だの、
昔昔はすごぉぉぉく重要なことやったんやろなぁと思います。
 
 
 
 

いつのことだか忘れてしまいましたが、
台風がやってきたのです。

大きな台風がやってきたのです。

電線がどこかで切れただかなんだか、
とにかく停電になりまして電気が使えなくなりました。

飲食店で電気が使えないというのは大変なことでして、
照明はもちろん、冷蔵・冷凍庫もストップ、ありとあらゆる電化製品もストップ、

そしてそして困ったことに井戸水を使用しているためにポンプが止まって水も使えません。。。

 
 
 
 

でもね、

レストランは営業するんです(笑)

山から湧水を汲んできて煮沸して料理に使い、
川で皿を洗い、
極力冷蔵庫の開閉は控え、

すんごい大変でしたが何か楽しかったような気もします。

 
 
 

さて、
停電から2日後の夜、

その日は絵描きのスズキコージさんのイベントがあったのですが、

2日経ってもまだ電気は復旧しておりません。。。
仕方ないなぁぁ、と停電でもイベントを開催することになり、

スズキコージさんが拡声器を持って第一声を発した瞬間っっ!!!

 
 
 

パチーーンと照明がついて電気が復旧したのでありました!

 
 
 
 
 
 

そして最後に、
浮羽の山、自然の厳しさ、といえばコレ。

 
 

冬の寒さ。

 
 

とにかく、とにかく寒いのです。

レストランも2月の1ヶ月間はお休みになっちゃうくらい寒いのです。

レストランは当時は小さい隙間が至るところにあり隙間風が吹くし、
ハム工場は暖房もなく、ソーセージを仕込むときは40kgほどの冷たい冷たい挽肉を1時間ばかり捏ね続けるという(たまにおかわりでそれを2回とか)苦行のような作業が待ち構えているのです。
水道管の凍結なんかもしばしばありました。

住んでる小屋は隙間風がビュンビュンです。
初めての冬は『絶対に部屋で暖房はつけない!』という掟を自分に課し毛布にくるまって耐えておりました。

寝るときは布団から顔を出すと寒いので頭まですっぽり布団を被って寝るのです。
寒い日は朝起きると部屋の中でタオルと靴が凍ってたりするのです。

 
 
 

ある朝、尋常じゃないくらいの寒さで目が覚めまして、
起きて窓の外を見ると、、、

 
吹雪っっっっ!!

 
それにしても寒すぎるっ、と思って窓の横を見ると、、、

 
 
 
たてつけの悪いドアが完全に開いていて部屋の中にまで雪が積もっておりました。。。

 
 
その冬の2月、レストランがお休みの期間に2週間ほど北海道の半田ファームさんにチーズ作りの研修でお世話になったのですが、
北海道の冬の快適さに感激したものです。

北海道では室内は半袖で大丈夫なくらい暖房がきいていて、外に出るときだけゴツい上着を羽織ればいいのです。

浮羽の冬の方が遥かに遥かに過酷でございました。

 
 
 
 

そんなこんなでイビサスモークレストランで2年間。

あの山の冬を経験すると、
『どんな環境でも生きていけるんじゃなかろうか』
という気になってくるのです。

『もっと過酷な環境でも生きていけるのか』

そんなことを考えているうちに、

『言葉のわからない場所で生活してみよう』

ということになりまして、海を渡ることを決意いたしました。

 
 
 
 
 

2005年7月 下山。

 
 

つづく。

 
 
 

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